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2007-02-11

『リトル・ミス・サンシャイン』

昨年からずっと観たいと思っていた『リトル・ミス・サンシャイン』を、やっと観てきました。
いやあ、素晴らしい。この時期になっても結構お客が入っていたのは、(アウォード効果もあるでしょうが)リピーターが多いのでしょう。私の後ろの席の人は、面白いシーンが近付くと「さあ笑うぞ」の構えを取っていらっしゃいました。いいなあ。私ももう一回観たい。

たいていの家には、バカバカしくて情けなくて恥ずかしくて他人には絶対に言えないし二度と繰り返したいとは思わないけど、でも家族内でその話題が出ると皆で大笑いしてスッキリするような、そんな思い出が一つや二つはあるもんだと思います。
この作品はまさにそういう話なのですが、「家族映画」っぽい感傷は全く入れず、適度な笑いと毒のあるユーモアを効かせた、実に後味爽快な映画です。
全てが行き届いた作品なので、どこから誉めていいのやら。
まず筋書き。ゴタゴタでギスギスでバラバラな家族六人が、末娘を美少女コンテストに出場させるために揃ってミニバスに乗り込み、夢のカリフォルニアまで旅する間に家族のまとまりを取り戻していく、という割と単純な話で、その分、端役まで含むキャラクターの濃さや道具立てのうまさ、エピソードの面白さが際だちます。

まず、ビューティクィーンを目指す七歳のオリーヴを中心に、成功していない成功論者のパパ、ヤク中でポルノ好きのおじいちゃん、沈黙の行と筋トレに励むニーチェかぶれのお兄ちゃん(自室には達磨図のようなニーチェの肖像が)、失恋して失業して自殺未遂した学者の伯父さん、相当テンパってるママ、と書き出すだけでもクラクラしてくるナイスなキャラクター。
それぞれのキャストが子役も含め(というか筆頭に)、実に演技派揃いです。
特に伯父さん役のスティーブ・カレルが、失意のどん底に沈み世を疎みながらもそんな自分にちょっと陶酔し、しかし気が付いたら家族のために結構な行動力を見せているという何とも複雑で可笑しい役を、ほとんど変わらない表情で演じていて秀逸。彼が(自称アメリカで一番の)プルースト学者という設定もうまいなあ。くだらないものが輝かしく煩わしいものが愛おしいというプルーストっぽい感覚は常に通底音のように響いています。

途中、一家の乗ったミニバスが故障し、全員で押さないとエンジンがかからないという絶妙な壊れ方をする設定も最高。
以後、家族がどんな深刻な雰囲気になろうと、出発するためには皆でバスを押し、走り出したところで一人ずつ飛び乗らなければいけなくなる。どうしたって深刻にも感傷的にもなれません。
このバスがまた、今にも喋りだしそうな風格のあるポンコツぶりなんだわ。

脇役も気が利いていて、エンジン押しがけの裏技を教えてくれる修理屋とか、オリーヴが言い間違えたオーダーをそのまま繰り返してくれるウェイトレスとか、オリーヴのハチャメチャ演技に逆上するコンテスト主催者ナンザマスカ女史(仮名)の隣でノリノリで応援しているミス・カリフォルニアとかが、ちょっとの出番でいい味をだしています。

実際のところこの旅で彼らが得たものは何もなく、むしろ、それぞれの状況は悪くなっているうえに一人減ってさえいるのですが、再びポンコツバスに乗って我が家に向かう彼らの憑き物が落ちたような顔には、「世の中捨てたモンじゃないかも」と思わせる爽快感がありました。

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リトル・ミス・サンシャイン

リトル・ミス・サンシャイン『リトル・ミス・サンシャイン』 (''Little Miss Sunshine'') は、2006年のアメリカ映画。監督はジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリスの夫婦。美少女コンテスト「リトル・ミス・サンシャイン」の最終審査に通過したぽっ
プロフィール

蛹原タオ

Author:蛹原タオ
sanagihara☆yahoo.co.jp
属性:書痴画狂・犬派・虫キチ・不定形生物好き
趣味:映画・演劇・古書漁・動植物観察
好き役者:A.ブロディ、T.クレッチマン、B.D.ハワード、J.イェンチ他
好き作家:稲垣足穂、種村季弘、たむらしげる、手塚治虫
座右の銘:三十六計逃げるにしかず
*06年3月15日以前のログはこちら

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