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2005-07-15

『ヒトラー 最期の12日間』

王様「悲劇だ。素直な心で考え直せば、これは断じて悲劇なのだ」
道化「けれど、腹の底で笑ってることに変わりはないのさ。喜劇と悲劇の違いってのはつまり、不幸な人間を表立って笑っていいか、いけないかっていう道徳感の違いだからな」
(横内謙介『愚者には見えないラ・マンチャの王様の裸』)



良い映画だと思います。
演出は、主人公トラウドゥルの一人称視点でヒトラーの日常を描いた部分と、それ以外の部分の突き放した描写が的確だし、出演者も(ガンツ先生が凄すぎて霞みがちですが)皆良い。
人に感想を聞かれたら迷わずお薦めする類の映画です。

しかしというか、だからというか、私は彼らを見ていて、実はバカバカしくてならなかったんですよ。
手前勝手な悲劇に浸ってみすみす破滅していく人達というのは、どんなに悲惨な目に遭っていてもやはり滑稽で、その滑稽さがリアルで怖い。
海外の映画評に「美化している」という批判がありましたが(まあこの批判は、ユダヤ人迫害について殆ど言及していない点に向けられているのだとは思いますが)、あれを「美化」、つまり何某かの美しいものがあると感じるのは、ちょっと危険なんじゃないかな。
逆に日本では「現実的な判断がなにも出来なくなっているボスと、それが判っていて内心嘲笑さえしているのに有効な反論が何一つできない幹部」という構図が、あまりにも普段見慣れた光景と一緒で身につまされたという企業人が(私も含めて)多いようですが、それはそれでとっても危険だ。

作中、エヴァが将校たちと砲撃の最中に飲み騒いでいるのを見て、トラウドゥルが「悪夢を見ているみたい」と口元を押さえるシーンがありますが、「終わらない悪夢」と「オチのないジョーク」は紙一重、というか同じものなんじゃないでしょうか。

ちなみに登場人物中で共感できるのは軍医さん、そしてフェーゲラインです。いやけっしてクレッチマンが演じているからというわけではなく。
軍医さんは、自分がこの状況に陥ったらこういう行動が取れればいいなという意味での共感。フェーゲラインは、自分は多分、こいつと同じような行動をとるだろうなという共感です。文句ばっか言って建設的なことはできやしねえタイプですね(ああ友人をなくしそうなことを)。
でもさー。死にたがりの狂信家より、生き汚い俗物のほうがなんぼかマシじゃないかー。

それにキャラ的にはこういう、自堕落で打算的で危なくなったらとっとと逃げる(含・現実逃避)、信念無用の俗物って大好きなんですよ。
「身重の妻」という、銃後盛り上げ必須要員の夫でありながらまったく意に介さず、破滅直前までオネエちゃんと遊んでいる辺りなんか、いっそスガスガしい(そういえば某映画誌の記者が腰を抜かしたいう例の場面は、彼の管轄だったのね)。これで本当に逃げ切ってくれていれば、拍手の一つもしたのですが。
一見上品、実は案外ゴロツキっぽいところのある(とエンキ・ビラルさんは言っている)トーマスは、この役にはぴったりでしたね。唯一の脱ぎ要員だったしね。

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プロフィール

蛹原タオ

Author:蛹原タオ
sanagihara☆yahoo.co.jp
属性:書痴画狂・犬派・虫キチ・不定形生物好き
趣味:映画・演劇・古書漁・動植物観察
好き役者:A.ブロディ、T.クレッチマン、B.D.ハワード、J.イェンチ他
好き作家:稲垣足穂、種村季弘、たむらしげる、手塚治虫
座右の銘:三十六計逃げるにしかず
*06年3月15日以前のログはこちら

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