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2010-02-11

『ブラザーズ・ブルーム』詐欺師の奇妙な愛情

あまりの出来の良さに、観終わってしばし呆然としておりました。
なんなんだこの未公開映画。
言いたいことは色々ありますが、とりあえず誰か劇場で観せてくれ!
面白いのはもちろんですが、お洒落でカラフルで適度にレトロで、画面の端々まで遊び心にあふれた映像といい、軽妙に見えて実は相当集中力のいる内容といい、絶対スクリーン向き!
時節柄、バレンタイン向けデートムービーと勘違いした善男善女を眺めるのも一興!

キャストも全員ハマリ役です。
凛子さん可愛いよ凛子さん!
彼女演ずるバンバンの、ディズニー映画で主人公の周りをうろちょろしているオチビさんキャラのような愛くるしい仕草と、それを裏切る過激な行動は、そこだけ編集して眺めていたいです。ブルーム兄弟(とくに兄)との細かい遣り取りも秀逸。
ヒロインのレイチェル・ワイズも良いです。「恍惚感を伴う発作」を持ち、雷や列車の轟音に性的興奮を覚えるというエロバカバカしい設定のキャラクターを演じても、少しも下品にならない名女優マジック。
どこまで裏があるのか解らない兄役のマーク・ラファロも、よく考えたら何の取り得もない弟役のブロディも、それぞれに素晴らしいです。

それにしても、長編2作目でこんな映画を作った、ライアン・ジョンソンというインパクトの薄い名前の監督は、いったい何者なんだ。
とりあえず、明日これを返却するときに前作(『ブリック』)を借りて来ようと思います。


さて、ここまで持ち上げといてなんですが、この映画は本格知能犯罪の爽快感を期待して観ると、いささか拍子抜けすると思います。
作中に登場する詐欺計画そのものには結構穴があるし、実際の展開にもご都合主義的なところがあり(このご都合主義が実は伏線だったりするんですが)、どこまでがトリックでどこからが成り行きか、はっきり解らないようになっています。
作品としてはそこがミソで、要するにこの映画は、虚構と現実、芝居と本音、自己と他者、さらには決定論と自由意志の問題まで引っ張っていける、一種の寓話的メタ映画なのです。いやー、凄い凄い。

以下はネタバレでお送りしますので、未見の方はご注意ください。


不幸ではあるが自業自得とも言える理由で里親を点々として育った兄スティーブンと弟ブルーム。13歳にして詐欺の才能とポリシー(「完璧な詐欺は皆を喜ばせる」)に目覚めた兄のもと、二人は裏社会では有名な詐欺師に成長する。

この、冒頭の少年時代のエピソードで描かれた兄の詐欺哲学と弟への愛情がこの映画のキモ。というか、はっきり言ってこの映画にはその2つしか描かれていません。そして、兄の中ではこの2つはおそらく区別されていない。

三十代も半ばになって、兄の作った役柄を演じるだけの人生にいい加減嫌気がさした弟は、足を洗うと言い残して兄の元を去る。
しかし、詐欺をやめたからって他にやることもないと気付き始めた頃、兄が最後の大仕事を持ちかけてくる。
ここから、天涯孤独の大富豪令嬢ペネロペをカモにした大仕掛けがスタートするのですが、嘘と本当の区別もせず一途に冒険を求める令嬢と、そんな彼女を本当に愛してしまう弟、それを筋書きに取り込む兄の間で事態は拡大しつつ転がり続けます。
最初は単純な共犯詐欺(架空の美術品密輸計画を持ちかけて手付金を騙し取る)だったものが、爆破強盗になり(しかも令嬢が実行犯)、偽ロシアマフィアとの取引きになり、兄弟の元師匠にして宿敵の隻眼老人(キャラ立ちすぎ)まで登場して、最終的には兄が自分のポリシーの正しさを証明して終わる。大変な掛金を払って。

ただし、あとから考えると後半の展開には気になるところがあります。
観賞中は、令嬢の暴走や弟の決断等、成り行きで起こったことを兄が筋書きに取り込んでいくように見えるのですが、ひょっとすると、彼らの選択や決断や恋愛は全て、兄が最初から設定していたものかもしれない。
冒頭、成長した兄弟の仕事ぶりを紹介するシークエンスがありますが、その中で「ターゲットに狙いどおりの決断をさせるために、相手の人生の重要な場面を再現して見せる」という手法が出てきます。
兄が二人にさりげなく仕掛けているのもこれではないか。
そう考えると、兄は弟の人生をそっくり騙しとって、自分の作品というか理論の証明にしてしまったという凄いエゴイストになるのですが、だからと言ってそのエゴは弟への愛情と対立するものではないとも思えます。
兄が弟のために選んだペネロペが、「嘘だろうと本当だろうと自分の人生として受け入れる」という女性だったことを考えると。


…と、ここまで書いてしまってなんですが、個人的には、やっぱり兄は「な~んちゃって」と生き延びていて欲しい!
そしてほとぼりが冷めるまで、バンバンと一緒に上野公園あたりで路上パフォーマー(認可制)でもやってればいいと思います。



※この映画にかこつけて、この作品を紹介。

『あなたの人生の物語』
もし、人生を始める前に展開や結末が解ってしまったら、人はどのように愛や幸福を捉えるのか、というSF短編。
偶然にもこの映画を観る直前まで読んでいたのが本書でなかったら、上記のようには考えなかったかもしれません。


『死ぬまでにしたい10のこと』
原題は“My Life Without me”
お話そのものというより、最後の兄の行動を見たときに、この映画を思い出しました。
でも、最近別の映画の情報チェックのためにサラ・ポーリーを意識していなかったら連想しなかったかもしれません。

theme : DVDで見た映画
genre : 映画

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【ブラザーズ・ブルーム】を観た

冒頭、幼い兄弟の悪巧みが描かれる「森の奥の洞窟に妖精がいる」 子供たちは弟の案内で洞窟へと入っていくその顛末から話に引き込まれていくライアン・ジョンソン監督の映画【ブラザーズ・ブルーム】を観た菊地凛子、「オタクな男が好き!」と意外な男性観を激白!!菊...

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こんばんは、蛹原さんの感想楽しみにしていました~!
本当にデートムービーと勘違いしそうな予告だったので、間違えて観に行ったカップルが
上映後ポカーンとしそう・・・だから劇場公開なしでDVDスルーだったのね!と思いました。
あ、想像と違って凄くいい映画でポカーン、の意味です。

(※以下ネタばれなので未見の方はご注意下さい)

私も兄はすべて計画していたんだろうなあと思いました。
あとバンバンは生きていて、なおかつ兄の計画すべて知っていたような気もします。
(最後に計画決行前夜のホテル、ブルームの後ろにいた彼女の何ともいえない表情が)
こんな風にどこまでが計画でどこまで本気かわからないところがいいですね!

『死ぬまでに~』兄=主人公、弟=旦那&子供、ですね。

balさん、いらっしゃいませ!
レス遅くなってすみませんです(^^;)

>偽デートムービー
一見お洒落で軽やかだから、かなり終盤まで普通にロマコメとして観ちゃいそうですよね。
そして意外にも重い後味に、会話が途絶えそうな(笑)

バンバンのあの表情は、私も「おっ?」と思いました。他の場面でも弟に対してちょっと怒ってるような顔をしますよね~
彼女とブルーム兄弟(というか兄)との関係も気になりますね。
私も彼女は兄の計画は知っていたんじゃないかと思います。
そして、兄も彼女には知られているだろうなと思っていて、でもお互い何も言わないという「プレイヤー同士の信頼」みたいなものがあったんじゃないかと、想像というか妄想しております。
あと、生き残った彼女が東洋の凄い医術で兄を助ける別エンディングがあるといいなv(余韻ぶちこわし)

>『死ぬまでに~』
隣のお姉さん=ペネロペですね(笑)
実はこの映画観て真っ先に思ったのは「あのお隣さん、それでいいのかな…」だったんですが(ヒネクレ者ですみません)、何かペネロペが回答をくれたような気がします。

はじめまして。
この映画、ずっと以前から気になっていたものの、
国内公開もスルーでやっとDVD鑑賞できました。
感想はまさに「なんなんだこの未公開映画」です。
劇場のスクリーンで観たかったですね…。

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。
本当に劇場で観たかったです…。
レンタル屋さんにズラッと並ぶのとミニシアターでひっそり公開するのと、扱いとしてどっちが上なのか知りませんが、作品的には後者が合ってると思うんですが(^^;)
忘れた頃に名画座とかでやってくれませんかね~

蛹原さま、ご無沙汰しております。

転勤&引越しの怒涛の日々をすごしておりまして、ようやく(今更?)
「ブラザーズ・ブルーム」を見ることができました。
(時期的には「SPLICE」か「Predators」を語るべきですよね。)

本当に「なんなんだこの未公開映画。」ですね。
でてくる人物みんなオシャレでお茶目で、電車や船や風景もステキだし、デートムービーにとっても最適。
そして、個性的な人物が、個性いっぱいに、どこまでが詐欺で、どこまでが幻想なのか
わからない芝居。何度みても発見がありそう。

劇場で見たかった~(涙)

で、
>やっぱり兄は「な~んちゃって」と生き延びていて欲しい!
>そしてほとぼりが冷めるまで、バンバンと一緒に上野公園あたりで路上パフォーマー(認>可制)でもやってればいいと思います。
同感です!
兄とバンバンには、その内、またブルームにちょっかいだしてほしいです。

rainydaysさま、こんばんは~(^^)
転勤とお引っ越し、お疲れ様でした。
「ブラザーズ・ブルーム」、引っ越し疲れを忘れるのにちょうど良いテンションの映画だったかもしれないですね(笑)
ホントに観るたびに発見がありそうで、来月発売の特典映像付きが今から楽しみです。
兄生存説(笑)に賛同ありがとうございます。
兄&バンバンには、弟夫婦の新婚旅行先とかをうろちょろしていて欲しいですね~
プロフィール

蛹原タオ

Author:蛹原タオ
sanagihara☆yahoo.co.jp
属性:書痴画狂・犬派・虫キチ・不定形生物好き
趣味:映画・演劇・古書漁・動植物観察
好き役者:A.ブロディ、T.クレッチマン、B.D.ハワード、J.イェンチ他
好き作家:稲垣足穂、種村季弘、たむらしげる、手塚治虫
座右の銘:三十六計逃げるにしかず
*06年3月15日以前のログはこちら

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