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2005-10-06

ドイツ語の解らない人が観た『Schneeland』

原作はヤスナリ・カワバタではありません。
ではどんな話かというとよく解らなかったのですが、とりあえず一般受けはしないだろうと思われます。
映像はドイツロマン派の絵画がそのまんま動いているように美しいし、音楽も良いし、何より主人公2人(トーマスとユリア・イェンチ)は、綺麗な中にもどこか神話的な力強さがあって魅力的なんですが、しかしそれ以上にとにかく話が、テーマが重い…。
と言っても、内容としては
・伴侶の死
・記憶を辿る旅
・雪景色
・薄幸の少女
・初恋
・純愛
・親の過干渉
・秘められた過去
・自立
という、実例はあげませんが程良く効かせれば観客をいくらでも陶酔させられる要素満載なんですが。
これらを容赦なく、甚だしく、生々しく、ミもフタもなく描いてみたらこうなった、という作品です。

以下、ネタバレ有(といってもネタが当っている保証はありませんぜ)。
映画は二つのパートに別れます。
一つ目は現代が舞台で、夫を失った女性作家が精神の均衡を崩してラップランドの荒野を彷徨い、廃虚の中で独り死んでいた老婆の遺体にインスパイアされて一つの物語を紡ぎ出す話。紡ぎ出されたのが二つ目の、大恐慌時代の物語。
……なんですが、現代編は殆ど主人公のモノローグで進むうえ、情緒不安定な彼女の行動は不可解な点が多く、率直に言って理解不能(^^;)
よってここから先は、過去編の方に徹しますのでご了承下さい。

吹雪の夜、雪原に張り付くように暮らす小さな村の善人夫妻の家に、大型犬をつれた浮浪者のような風体の男アロンがやって来る。
散髪して髭を剃ったら好青年になったアロンは、旅人の定番「海の話」などして子供たちに懐かれますが、ヨソモノにはやはり色々あるようで、やがて相棒ロルフとともに荒野の端っこで馬番をして暮らすようになります。
一方、村にはイナという少女がいて、暴力的なおとっつぁんに怒鳴られ殴られ性的虐待を受けながら、病気のおっかさんを守っている。
この、父が娘を犯す描写は秀逸だと思います。ただただ即物的で、観ているのが辛くなるリアリティです。つーか、一人でマ○掻いてるのとどう違うってんだよダッチでも作れよクソ親父。

やがておっかさんは死に、おとっつぁんの暴力は続く中、イナはアロンと出会う。
初めは草摘みの合間に目が合ったり、アロンが酔っぱらって歌っているのを、イナがどんな聴力でか聞いていたりする程度だったのが、怪我をしたアロンに(ちなみに狩猟用の罠に引っ掛かったらしく盛大に顔からコケている)イナが薬を持って行ったことから恋に落ちます。
といっても、あんな父親がいるせいか、人付き合いをあまり知らないらしいイナの愛情表現はちょっと独特で、最初はアロンが寝ていれば近付き起きたら逃げるという、野鳥とバードウォッチャーのような距離感が続きます。
大自然を背景にそんな関係を美青年と美少女が。

しかし甘くないドイツ映画、そんな純愛うっとりタイムは長く続きません。
イナは、抱かれると決めたら思い切りよく全裸でやって来ます。前置きなし。それも誘うとか迫るとかいうのではなく、単にいらないから着てないという脱ぎ方です。惚れ惚れします。
思うに彼女にとっては男性との関係=SEXで、恋に落ちるとはつまり発情するってこと。父との不自然な関係が、かえって彼女を野生的にしてしまうようです。複雑骨折です。
ついでに、イナの体はハリウッドやアキバに見るような、都会人の妄想の野生少女とは違って、作為的に絞ったり上げたりしていないので、さらに惚れ惚れします。
しかし常識人なアロンは、まずは心を通わせることを教え、おかげでイナは徐々に強く父に対峙するようになる。

そんな父娘の争いの中で、父が頭を打って寝たきりになり、イナの介護でなんとか生き延びる。
ここがまた、非常にシビアな描写です。紙オムツなんか無い時代ですから腰の下に藁を敷いて汚れたら取り替えます。その都度、自分を蹂躙してきたブツと対面するのです。ひええ。(ドイツには制限が無いらしく、ブツはしっかり映っています)
これは許しとか情とか責任感で説明できるものではない気がする。
愛情が時に暴力の形をとることはよく言われますが、憎悪が思いやりのような形をとることも、多分あるのです。イナの介護を受けた父は心を入れ替えるのだろうと、恐らく大方の観客は期待しますが、事態は何も変わりません。
結局、多大な犠牲とともに彼女はやっと父から解放されますが、その時、恋人は湖に消えています。数十年後に作家が彼女の遺体を見つけるまで、彼女はずっとここに居たようです。
最後は、物語を書き終えて自分を取り戻した作家が、子供達のもとに帰還してEND。

そんなわけで、難しいテーマに挑んだ美しい映画には違いないのですが、振り返ってみれば虐待オヤジの所業ばかりが思い出されます。はっきり言って後味はあまりよろしくない(--;)

ヘコタレそうな方は、純愛うっとりタイムだけ御堪能いただくことをお薦めします。チャプターでは12から13です。ついでに忠犬ロルフアワーは11から12。賢い犬と頼りない飼い主に癒されます。

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プロフィール

蛹原タオ

Author:蛹原タオ
sanagihara☆yahoo.co.jp
属性:書痴画狂・犬派・虫キチ・不定形生物好き
趣味:映画・演劇・古書漁・動植物観察
好き役者:A.ブロディ、T.クレッチマン、B.D.ハワード、J.イェンチ他
好き作家:稲垣足穂、種村季弘、たむらしげる、手塚治虫
座右の銘:三十六計逃げるにしかず
*06年3月15日以前のログはこちら

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